限定合の出し方入門
入門記事なのでマニアの皆様は優しく見守ってください。
【限定合の出し方入門】
ここでは駒台から選ぶ打合の限定合を取り上げます。
普通詰将棋で合駒を出したい。でもどうやって?というお悩みに答えるための記事です。
明快さ最重視で非常にざっくりした記事になっているので、マニアな方から見ればいくらでも例外が思いつくと思いますがそこはご容赦ください。
限定合:
合駒の中で、この駒以外は早く詰むということで、一種類の駒に合駒を限定させること。
(将棋タウン 用語集より)
要するに限定合を出すためには「○○を合駒すると一番受方が得をする(一番長く生きのびることができる)」意味付けを考える必要があります。
ここではその意味付けを大きく2つに分けてみようと思います。
●積極的合駒(『強い』合駒)
→盤上に残ったときに一番強い受駒になる
●消極的合駒(『弱い』合駒)
→攻方に取られたときに一番役立たない駒
積極的/消極的合駒という名称は特に定まったわけではないですし、全体でコンセンサスが得られているわけではないです。ただ代わる表現も思いつかないのでこの用語を使用します。
積極的/消極的な意味付けのどちらかを使用したり、あるいは両方を組み合わせたりしたりして合駒は限定されていることが多いです。
ちなみにどっちの意味付けを使用したほうが価値が高いとかはないです。
話が長くなるとアレなので早速例図を載せています。
やっぱり用語より例題を並べるのが一番伝わるはず。
【積極的合駒】
→盤上に残ったときに一番強い受駒になる
(金合)

12飛成、13金合、同龍、同玉、23金、14玉、24金まで7手詰
2手目は23地点に利きをもつ"強い"合駒を選ばないと23龍までの即詰です。
横利きを持つ合駒は飛か金しかありませんが、飛は品切れなので金合で決まり。この限定の仕方はセコいですけどごめんね。
(飛合)

42飛成、32飛合、34桂、11玉、12香、同飛、同龍、同玉、32飛、11玉、22桂成まで11手詰
詰キストなら1000回ぐらい見ているかもしれない収束パターンです。もはや共有財産。
2手目の合駒が飛以外ならば5手目12香に同玉とするしかなく32龍以下早詰。
32地点から12地点に利きをつくれるのは飛のみ。
(角合)

43飛成、33角合、24香まで3手詰
双玉を利用するパターン。2手目角合以外ならば32飛成まで、香を使用せずとも詰んでしまい駒が余ってしまいます。角合ならば逆王手を無視できないので、24香とするしかありません。駒を余らせない意味付けの限定合でした。
ひとまず3パターンぐらい出しましたけど、応用すれば他合の限定もできそう(実際にできる)という雰囲気が伝わればいいです。
【消極的合駒】
→攻方に取られたときに一番役立たない駒
こちらは、盤上に残ったときに役立つというわけではなく、相手に取られたときに何が一番役立たないかという意味付けで決めます。普通に考えれば歩が一番役立たなそうですが、当たり前すぎるので歩限定合が消極的意味付けで登場して高評価をもらえるかというとウーン。
消極的合駒では頭が丸い角合や桂合の頻度が多いです。
(歩合)※逃れ図です。詰みません。

44馬に33合。何を合駒されても取るしかありません。
歩合以外の駒はすべて詰みますが、歩合だけ打歩詰で詰みません。
(桂合)

44馬、22桂、同馬、同歩、23桂、同歩、44馬まで7手詰
歩合を二歩禁で消してみました。
2手目他合は取って即詰。桂合のみやや長くなります。
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ここまで読めば合駒の限定のさせかたがお分かりいただけるでしょう。
カンタンですね!
最後にまとめとして課題を1つだけ提示して終わります。
【確認課題】香合が出る詰将棋をつくってください。
この課題を選んだ理由がお分かりいただけるでしょうか?
香合を限定させるためには積極的・消極的意味付けの両方が必要なのです。
香という駒は飛の完全下位互換で、歩の完全上位互換です。つまり、"強い"駒を求められるだけならば飛が選ばれるし、"弱い"駒を求められるだけならば歩が選ばれるはずです。なので香合を出すためには適度に強くて、適度に弱い駒が求められる構図を考える必要があるのです。
一番いい図かは分かりませんが、ひとまず私が考えた図はこちら。

33馬引、(イ)24香合、16歩、14玉、26桂、同香、15歩まで7手詰
(イ)24飛合は、同馬、同玉、25飛、14玉、26桂まで同手数駒余り。
(イ)24他合は、作意順同様に進めて26桂までで詰み。
2手目に26地点に利きを持たない駒を出してしまうと、5手目の26桂で詰んでしまいます。そう意味では香合は他合より"強い"ですが、かといって最強である飛合を出してしまうと、攻方に逆用されてしまいます。そういう意味では、香合は飛合より"弱い"という理由で選ばれていますね。
ちなみに上の図はまだまだ逆算できそうなのでやりたい方はお好きにどうぞ。